江差高等看護学院のお話(元高校教員の視点から)。

新入生4人だけ…江差高等看護学院の新学期 「パワハラ問題」以外にも「存続の危機」の課題
先週金曜日、江差高等看護学院で行われていた生物の授業。自らメスを握って鳥の心臓を解剖しているのは、今月入学したばかりの1年生です。■教師:「切れなかった?あの~逆です。メス。それは切れません。」実験…

このお話、ここ数年ニュースに出てきている「江差高等看護学院」のお話です。
実は、私(すぎやま)は過去に江差の隣町で高校教員していまして、、、その辺りからお話を少し。

こんなお話でした。


看護師を育てる3年制の江差高等看護学院。
1学年の定員は40人で本来であれば学校には3学年合わせて120人の学生がいます。
しかし、いまは20人にも達していません。

(中略)

「当学院の入学者ですけれども、2年前が8名で昨年が6名で今年が4名と減少してきております。」

看護教育では、複数グループに分かれた実習形式の授業も重要で、道は、教育の質を確保するためには最低でも1学年12人の学生が必要だとしています。
しかし、江差高等看護学院はそれを大幅に下回っています。

「学生数が少ないことで逆に丁寧に指導が行えるというメリットがありますけれども、一方で、やはり実習形式の講義をするというのが非常に難しいという課題がありますので、そこは学年を超えた学生間の交流という形で進めていきたいと考えています。」

原因の1つは、3年前に問題になった教師による学生へのパワーハラスメントです。
学校は問題の反省から運営体制を一新し、ハラスメント対策を行うなど取り組みを進めてきました。その成果もあって、学校の環境は改善。学生たちも学びやすい環境になっています。

(中略)

HTBが道内の看護学校と看護系大学47校の入学者数を調べたところ、看護系大学は定員に達しているところが多い一方で、看護学校はおよそ8割に当たる27校で定員に達していないことが分かりました。

HTBweb『新入生4人だけ…江差高等看護学院の新学期 「パワハラ問題」以外にも「存続の危機」の課題』より

新入生が4名だけ、その上の学年も8名、、、というかなり寂しい状況になっていて。
「パワハラ」が原因の一端で、、、また「大学への進学」が多くなり看護学校の人気が落ちた、というのが人数減少の大きな原因だろう、というお話で。

昔、隣町で高校教員していた時に聞いたような、聞かなかったよーな。

そもそも、私が某高校に着任した時「江差高等看護学院への合格は10年近く(?うろ覚えで、、、7年だったかも)出ていない」「ウチの高校は出禁だから」みたいな話がありました。

また一般的なお話として「看護大学よりも高等看護の方がキビシイ」「その分『現場で動く』ということで就職があるらしい」、ただ「大卒の方が、管理職になりやすい・昇進しやすい・給料がいい」という話もあって。
「どういったキャリアを考えているか(最終的に管理職まで見据えてるのか、現場で一生終わるのか、みたいな話)で変わるよ」、、、みたいな話をしていました。

そもそも江差高等看護学院のある地域は、ど田舎で。
隣町から通うのに車で30分・バスだと1時間とか、1時間20分とか、、、接続が悪いと待ち時間入れて2時間とかは全然ある地域で、、、学校帰り・17時〜18時の間のバスに乗れないと次は19時とかで実はそれが最終バス、みたいな交通環境です。

私が着任した頃はまだ「JR」がありましたが、北海道新幹線が来たところで「廃線」になりました。結果として隣町からは「バスで行く」しかない状況になって、通うことがとても難しい状態になったと思います。

他の近隣の町から通うことは可能(八雲町・熊石から江差へはバスがあるハズ、厚沢部町からは通えるのは間違いない)ですが、、、家から通うのがハードルが高い地域、なんですよね。

そもそも、この地域は高校が3校しかない。

そもそも、成績上位者は「函館の高校に進学」します、、、ので「この地域に残る高校生が少ない」んです。

この地域の高校、、、江差高校・上ノ国高校・檜山北高校、の3校、ちょっと調べてもらえればわかると思いますが、そこまで学力の高い生徒が行く高校ではなくて。この地域の成績上位の生徒の大半は「函館や札幌」に進学しますし、部活動で全道に出るレベルの生徒には「私立高校(札幌・函館)がスカウトに来る」ので、そういった「学力が高い、もしくは部活で活躍するような生徒」はそもそも残っていることが珍しい地域、、、です。

過去、江差高等看護学院が定員を越えてた理由

おそらくこんな感じです。

  1. 交通機関(JR)があり、通える生徒が多かった。
  2. 看護大学がほぼ無い時代、看護師になるのは「看護専門(高等看護か、准看学校か)」だった。
  3. そもそも、生徒数が多く(20年以上前は江差南高校もあったし、熊石高校もあった)看護進学をする生徒も多かったはず。

「今現在になると、何一つ残っていない理由」で、、、そりゃ、学生少なくなるよな、、、と思うんです。
江差高等看護学院に何か「特徴的で、この学院にしか無い・できないこと」があるなら、今でも学生が減ることがないと思いますが、、、そういうことではなく「外的な要因」での増減、なわけです。

そして、、、函館には高等看護学校がいくつもあって、高校から函館に進学した生徒はそっちを受験するでしょう。
だって、函館の方が学生多いですし、学生生活満喫できる地域ですし、、、。
わざわざ「ど田舎の高等看護を選ぶ」理由ないわけです。
今、江差高等看護学院を選ぶ理由の大半が「家から通えること」じゃないかと思うんですが、それが「難しい状況」になった結果が江差高等看護がダメになった理由だろうなー、、、と思っています。
ちなみに、記事中に出てくる「八雲町」ってのは江差とは逆の太平洋側の町、、、に見えるんですが、実は「飛び地」で「旧熊石町」が八雲町と合併していて、、、。ですので「熊石地域から通っている」と考えられるなー、と思っています(未確認・たぶん合ってると思います:太平洋側の八雲町からなら、函館に行く生徒のが多いので)。

江差高等看護学院がなんか悪いとかじゃなくて、、、。もー、田舎の学校が満杯になるほど「子ども・生徒」が居ないんだろうなー、と。

、、、ただ、昔は「殿様商売」で「お宅の高校は出禁だから」くらいの事が言えたみたいですので、、、そーゆー状況がパワハラとか今の状況を生んだ、、、と言う人たちもいるだろーなー、と夢想してみたり。

江差だけじゃない、看護学校だけじゃない、道内の大学・専門学校の話

どー考えてみても、、、、札幌や旭川・函館・釧路・帯広・北見くらいの地域でさえ、大学の維持は難しくなっているんですよね。
札幌でも短大がどんどん無くなっていっていますが、地方では専門学校も消えていっているようです。
結果、「進学と同時に札幌・旭川・函館・釧路に出る」わけです。
で、あれば「本州に行くほうがいい」と考える生徒も増えているかもしれません。

北海道教育大学函館校や、釧路校が教員養成課程を持っていない(2006年以降)とかも消えていっている話の一部かもしれないです。教員になりたい函館の高校生は「教育大旭川か札幌・岩見沢」を受験するわけです(国公立の話)。で、国公立じゃなくていいなら、まだ函館市内に教員免許が取れる私立大学があるわけで(特定教科になりはしますが)、まだマシかもしれないですが、、、教員になるのも「地元では無理」な地域が多いわけです。

札幌は「たくさんの学生」を受け入れているので、大丈夫かもしれないですが、地方は「私立大学」がキビシクなるのかも、、、と思っています。そこまで学生が多くない地域が増えていますので「江差高等看護学院」と同じことが起きるのは、遠い未来ではないかな、と。

教育は「余計なお金」と「余暇」が無いと維持できない

教育を維持するには「余計なお金をかけるだけの余裕」と「余計なお金をかけるだけの時間(=余暇)」がないと難しいです。
今、江差の辺りには「その余裕も時間も(おそらく住民全体に)ない」んだろうと思います。、、、もしかすると北海道がそうかもしれません。高校も合併・廃校の話が多いですし「維持するべき!」という強い動きがでることはほとんど無いですし、、、。

江差高等看護学院は、おそらく「ゆるやかに・消えていく」だろうと思います。それはまた「田舎の地域の教育拠点・文化拠点」が一つ失われることと同義だと思われます(ウチの地域に看護の進学先が無いなら、高校から函館・札幌に出てしまおう、という子どもが増える・子どもが消えると「その地域で学問する人が減る」≒文化的な事柄が減る)。
道内は、高校を持たない市町村の方が多いくらいの比率で。高校から町外に出るのは当たり前、通えないから下宿・寮に入る状況が増えていて。そうなれば「地元の専門学校」に帰って来る意味もほとんど無い。
結果、田舎の看護学校・専門学校・大学が消えていきます。今、「田舎で働く看護師」は絶対に必要な人材ですが、その育成は「都市部」が担っているわけで、、、もう既に「地域をその地域だけで維持する」ことができなくなっている(20年以上そうかもしれません)わけです。

看護、という学校

とてもわかり易い学校です「看護師を育成する」わけです。
だから「専門学校」なわけです。
ところが「看護大学」が近年増えました。
札幌市が持っていた高等看護学校が「札幌市立大学看護学部」になったり、、、看護専門→看護大学、という移行も多くありました。
一つには「准看護師の資格を無くして・看護師資格を1本化≒大卒の資格にしよう」という流れがあったように思います。今はまだ准看の資格はありますし、看護師の資格は「大卒」の必要はありません。

受験の難易度としても基本的に「看護大学」が難しい・「看護専門」が簡単な状況です。学力が高い生徒は「看護大学に行く」という流れが出来上がりつつあり、看護専門に行って3年ですぐ働く、という選択は少なくなっているよーな気がします。

他方、一旦就職をした後にもう一度資格がほしい、という人たちにとって「看護専門・3年で」というのは魅力的です。状況によっては仕事をしつつ、夜間で取ることも可能で、、、とても良い「キャリアアップ」の方法だと思うわけです。ただそれは「学生≒受験生≒高卒すぐの生徒」が増えたわけではない、わけです。

結果「受験生は看護大学に行く」という流れができつつあると思います。
、、、学力低めの高校だと「看護専門・推薦受験」みたいな形を推し進めるんですが(私はそっちの経験が多いです・教員時代は)、基本的に「看護は大学」になっている、と思います。
その上で「江差高等看護学院」のような地方の高等看護専門学校が生き残るのは「至難の業」=「無理」だと思うのです。
、、、税金投入して(道立なので)「4名」のためにどこまでやるべきなのか?
建物の維持・管理から人件費まで考えると、、、ちょっと考える必要があるよーな気がするんですが、、、どーなんでしょ??

これ、看護だから維持していますが「消防学校」だったり「警察学校」を同じように維持したでしょうか?
もっと言えば「短大」だったら「教育大」だったら「経済学部」「理学部」、、、何だったら維持して、何だったら維持できないんでしょうか?

「もう、看護学校は地域で維持できない」、、、、これが北海道の田舎の現状です。
教育環境を考えると、札幌1択になりつつあります。さて、この先どうなるか、、、?

入塾・家庭教師について

面談・体験授業からスタートしています。

個別のお問い合わせもこちらからお願いします。

家庭教師がつくる塾BASEホームページ
札幌の家庭教師屋さんホームページ も御覧ください。m(_ _)m

この記事を書いた人
すぎやま

札幌の家庭教師屋さん・家庭教師がつくる塾BASEの人
名古屋出身・富山大学卒・富山で小学校講師・北海道で公立高校教員・家庭教師をしていたら塾ができていました。

すぎやまをフォローする
教育
シェアする
すぎやまをフォローする

コメント

タイトルとURLをコピーしました